ぇ、、


いま、、なんて言った??


俺が、、俺が…



「アスマのことを好きだぁ!!??」



わけが分からなくった結果。






知らないうちに心臓がバクバクいいだした。落ち着け、モチツケ、なんて思っても所詮ムダで、むっつりとしたままの彼にむかって意味不明なことを口走ってしまった。
なんだか暴走しだしてるな〜ってのが自分でも分かるけど。

「知らない。そんなの、ぜんぜん知らない。てか好きとか以前の問題だし。なのにさ、ちょ、ちょっと何言い出してんのイルカ先生、俺、しっかりアンタに俺のキモチ伝えたつもりだよ!!??


あの日の居酒屋で!!」



自分の前で、手がせわなしなく動く。

どうしよう、どうしよう、どうしよう。




彼はいったい何をとち狂って俺がアスマのことを好きだなんて思い込んでいるんだろう。
もしや、想いが通じたことによって生じた、、一種のノイローゼとか、幻覚ってやつ?




いや、待て。ちょっと待て。

俺は、何て言うか、すっごく大切なことを聞き逃しているような気がする。
なんだっけ…


そんなカンジでワタワタする俺に向かって、イルカ先生はフンと鼻息を出す。

「ええ、俺はあの日、ちゃんと居酒屋でアナタの気持ちを聞きましたよ、この耳でしっかり。俺も好きです!ってね」



なんだ、ちゃんと覚えてたんじゃないか、イルカ先生。じゃあ話は別じゃないか。

完璧な両想いじゃないか。

アタマの中がこんがらがり出して、すっごく初歩的な質問を彼にしてしまう。

「な、なのになんで、、アンタはいきなりアスマのことなんて話に出し始めたんですか!?」



と。
突如、イルカ先生の顔がボッ、と赤くなった。

「だ、だから…あの時、俺は言ったじゃないですか…

俺は…ずっと前から、アスマ先生のことが好きだったって…


そ、そしたらいきなりカカシ先生が、俺もです!って…


言ったじゃないですかーーーーーーーッッッ!!」





反転して、真っ白になる視界。。




ようやくパズルがとけた、そんなかんじ。。

ああ、そうだったのか。うん。



あの、二人の居酒屋でのやりとりを思い出してみると、俺は…俺は、、彼の言い掛けた言葉を遮るような形で…「自分の気持ち」を伝えていた。

そう、心の中で「彼の告白の語尾は『カカシ先生のことが好きだったんです』だ!」と確信して。





…あー。





いきなり、しーんとする資料室内。頭を抱えて座り込む俺と、そのまま壁にもたれかかり俺を見下ろしているイルカ先生。

それこそが、『俺が聞き逃していたすっごく大切なこと』だったのだ。




…にしてもさぁ。



「アスマって…笑顔、ステキでしたっけ?」

「ハイ」


しゃがみこんだまま、ボソリと言うと、頭上からハッキリとした答えが返ってくる。



「アナタもアスマ先生のことが好きだったんですから、それくらいのことは考えていたんでしょう?」



だから、違うって。


「違います、イルカ先生

あなたはカンチガイしてます」


ああ、今更になって、彼に本当の気持ちを伝えるだなんて、俺はなんてバカなんだ…

というか、この数週間…俺は一人で浮かれていたのか。。



「俺はあの時…アンタが『ずっと前から…』って言い掛けたから、てっきり俺のことを好きだって告白したんだって思って…アンタが最後まで言い終わらないうちに、『俺もです!』って言っちゃったんです。

まったくもって…自意識過剰な話ですよね」



みるみるうちに、イルカ先生の顔に困惑の色が浮かんでくる。



「嘘だ」


「嘘なんかじゃありません」



これだけは、彼に伝えなければいけないと思った。たとえイルカ先生が、アスマのことを好きでも、だ。



「カンチガイとかしても、俺はアンタのことが好きなんです。ずっと前から」


そう言った瞬間、くしゃりとイルカ先生の顔が歪んだ。
てっきり伝わっていたということを、今、ここでもう一度伝え直すなんて奇妙なことだ。


「そんなハズ…ない」


「なんでそんなハズないんですか」



「俺の…俺のことを好きだなんて言ってくれる人…
い、いるわけないじゃないですか!!」


なんてことを言ってるんだ、この人は。

俺は軽く首を振り、彼を見上げた。そこには、やっぱりいつもと変わらない澄んだ黒い瞳があった。



「思い込みはいけませんよ」

彼に何て言おうか考えた末出た言葉は、かすれ気味でかなり情けなかった。しかもなんだか忠告してるみたいになってしまった。

そう聞いたとたんに、イルカ先生の肩がビクッとする。そして、目をこれ以上ないくらいに開けた。



どうしよう、


こんなイルカ先生、はじめてだ。


「あのですね…さっきも言いましたけど、イルカ先生、俺はあなたが本当に好きなんですよ?」


そう言ったのに、その姿勢のまま固まり、全く反応がない先生に近寄ろうと立ち上がると、彼は途端に壁沿いに俺から遠のいた。視線は俺からはなさない。
ドク、ドクと鼓動が咽ちかくまでせりあがって来た。


何だか急に、今になって彼に告白した事がはずかしくなってきた。


頭が回る。
グラグラしてくる。



「…信じてくださいよ…」




俺が彼に向かって手を伸ばしたのとイルカ先生がドアノブを握ったのは同時ぐらいだったと思う。




「絶ッッッッッッッ対に信じない!!!!!!」



資料室のドアが、ものすごい量の埃を舞い上げて開き、閉まった。
古びた廊下がミシミシ軋んで、イルカ先生が走っていく音が耳に入った。






また、先生に逃げられちゃった。





20071001


…放置、して、ました;


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